切削加工事例紹介

切削加工事例

切削加工サンプル1

比較的にサイズが大きく、材質がアルミなので内径寸法を管理するに当たり、熱膨張が高く加工時に切削熱を除去し温度を一定にしないと寸法管理が出来ません。 更に内径公差±0.5μmは、硬質アルマイト後の仕上がり寸法なので、アルマイト処理での工程管理をどの様に行うか、何度もテストを繰り返し、管理方法を見つけ出すのにかなりの時間が掛かりました。 相手部品が内径に入り高速で摺動するため、♂♀の隙間管理が重要で、双方の寸法管理は同様のものとなり、層別勘合を避けるため、加工時での誤差は0.5μm以下を目指して加工を行いました。 ここで勉強になった事は、加工の精度維持管理もさることながら、「表面処理での精度維持管理と表面処理の性能が製品機能にどの様な影響を与えているか」でした。 ♀には硬度の高い処理を施し、♂には摺動性能の高い処理を施しました。

切削加工サンプル2

この製品の特徴は外径部の羽と内径部の溝です。

●外径部の羽について
サイズが小さく羽と羽の間隔が小さい為、小径の工具(エンドミル)で加工しなければならなく、精度が出し難かったです。
用途は不明ですが、超音速で回転させるタービンなので、バランス(位置・形状・等)精度が10μm以下を要求されており、加工の難易度の他に測定も相当難易度が高かったです。

●内径部の溝について
この様な内径溝の製作方法に取り組んだのは1991年年初からで、始めの頃はどの様な工具でどの様に加工したら、この形状の溝加工が可能なのか分かりませんでしたが、何もないところから検討し、工具・加工方法の両面から開発し現在に至っています。
この様な形状や精度が必要な物は、流体軸受けが代表的な製品です。
現在ではPC記憶装置HDDの軸受けとして広く使用されており、皆様が使用しているPCにもれなく使用されているのでは無いかと思います。
ここで少し話が逸れますが、普通のベアリングと流体軸受けの相違を説明しておきます。
素人話なので専門家の方々から見たら、異論が有ると思いますが、専門家の方々は読まなかった事にして下さい。
ベアリングの代表的な物はボールベアリングです。
大まかに部品構成を分けると、外輪・内輪・ボール・ボールガイドの4種類の部品が主要部品と思います。
その外輪・内輪にボールの軌道面(R溝)があり、軌道面にポールを並べて、更にボールの隣同士が接触せぬよう、又は片側に偏らぬようにボールガイドで均等に配列してさせます。ニードルベアリング等も同様な考え方です。
流体軸受けの部品構成は実にシンプルで、シャフト・アウタースリーブ・スラスト板の3部品が主要部品となります。
そのシャフト外径かアウタースリーブ内径の何れか片方にラジアル方向に浮力の付く微細な溝とシャフト端面もしくはフランジ面かスラスト板端面にスラスト方向に浮力の付く微細な溝を加工し、部品同士が接触せずに回転運動をさせますが、停止・機動を繰り返す時に部品同士の接触が発生してしまう場合があり、流体(潤滑油の様な物質)を封入し流体の表面張力などを利用し接触させないようにしています。
また、部品の材質や処理等に因り流体を封入しない場合も考えられます。

<ボールベアリングの長所と短所>
長所は長年の歴史があり、あらゆる回転体に使用されており既に証明されていますが、あえて流体軸受けと比較すると、重量物を搭載、支持した場合でも回転に支障が無く、低速から比較的高速領域まで用途範囲が広い。 短所はボールの転がり音がノイズになりPC等に使用する場合はノイズ消去をしなければならない事と、回転時の振れがある程度の数値以下にできないし、超高速領域には使用し難い、それは接触している為、摩擦熱が発生し焼き付き等の不具合が発生してしまうためです。

<流体軸受けの長所と短所>
長所は回転速度が上がれば上がるほど、求芯作用が働き回転振れが小さくなる事と、非接触の為ノイズが発生しない、従って高速回転には非常に良い軸受けであることです。 短所は重量物を搭載、支持すると、特に低速回転領域(先に説明した通り停止・機動を繰り返します)の時に部品の接触が発生してしまい、不具合を起こす事が考えられることです。

この辺で本題、内径部の溝に戻ります、 この様な部品なので当然精度は「超精密」です。 公差は±0.5μm、真円度・円筒度は1μmの指示があり、溝の深さは6μm±1μm (溝条数は内径サイズによって6〜24条)各溝の深さ全てを±1μm内に納めるのもかなり大変です。 総じてこの内径溝の加工は超難易度が高く、加工方法から始まり、工具の設計製作、部品の精度、最終的に部品精度の保証(計測)方法と一事が万事、とても大変な事が多くて、弊社にとって加工の基礎技術を構築させて頂いた有り難い仕事だったと感じています・・・・勉強になりました。

切削加工サンプル3

製品が小さく、NCとMCの2工程で加工を進めるには、2工程目MC加工でのクランプが問題なのと、やはり小さい為クランプ時の繰り返し位置決め精度が難儀なため、弊社ではNC1工程(ONマシン)で仕上げてしまおうと考え加工工程をレイアウトしたが、なかなか角度が安定しなく、要求精度を満足させる事が出来ませんでした。
数週間、プログラム・工具・etcを変更し悩んだ末に、測定時の製品を正しい姿勢に固定させる事が出来てなかった事に気付き、対策を講じ安定した測定値が得られるようになりました。 実際には、加工上でのバラツキもその間に対策していたのですが、改めて測定の難しさが解り、後学に役立ったのですが、測定設備の能力不足を感じ、3次元光学顕微鏡へNC割り出しの円テーブルを追加オプションとして装着し、かなりの出費をしてしまいました。
その甲斐もあり、今では高度な測定が可能となっています。
対応可能な材質:ステンレス・KOVAR・50ALLoy(低膨張合金)・等

切削加工サンプル4

この手の内径溝加工は発想次第でかなり色々な形状が製作可能です。
ただ、加工をご存じの方ならばご理解頂けると思いますが、バリ処理が大変です。
特に端面から溝入り口の鋭角な部分は、どこからバリでどこから製品部分かが不明な形状をしているので、この部分のバリ処理には難儀しました。
対応可能な材質:ステンレス・アルミ・銅合金・等

切削加工サンプル5

Sample4と同様な内径溝加工ですが、通常は溝だけ別工程で行うのが一般的な考えです。
この部品は肉厚が薄く、溝加工を行う際に内外径が歪んでしまい、内外径共最小寸法と最大寸法の誤差が大きく、要求公差に納まらないので、NC1工程で加工し精度確保をした結果、何とか内外径とも50μm内に納まりました。
金属の加工をしていると、素材や加工の応力、または機械の基本性能等で、真円度・円筒度・平面度・直角度・平行度・面粗さ・等の形状精度に悪い影響が出て、製品を要求精度内に納めて仕上げる事が、出来ない事も多々あります。加工の方法や機械の選定には長い経験を必要としますので、高精度な切削加工を望まれる場合は、経験の豊富さも重要です。
対応可能な材質:ステンレス・アルミ・銅合金・等

切削加工サンプル6

NC旋盤で内側にこの形状の穴は、正直大変です。
特に隅(角)部にRが残ってはならない事が条件だったので、ワイヤーカットやプレス打ち抜き等の加工方法では、意図する隅形状が成立せず、弊社が取り組む事となりました。
穴の形状・精度は目論み通り意外と簡単に成立しましたが、肉厚バランスが悪く外径変形と、穴周辺のバリで苦労しました。
それでも治工具や加工方法の対策で、外径10μm以下バリ不可の要求を満足させる事が出来ました。
対応可能な材質:ステンレス・KOVAR・50ALLoy(低膨張合金)・等

切削加工サンプル7

Sample2と同様、高速回転用のタービンで毎分40万回転させる物なので、軸心に対する羽のバランスが重要です。
弊社で製作した物はほとんどバランス取りが不要となり、組み付けの作業性が大幅に改善されました。
回転体なので、内径の真円度・円筒度、並びに内径に対する外径部の振れ精度・同軸度・羽の位置(バランス)精度が2μm以下の要求でした。
対応可能な材質:ステンレス・アルミ・銅合金・等

切削加工サンプル8

ドリルやエンドミル等をクランプする時に使用するコレットチャックですが、この製品は一般的な産業機器に使用される物ではありません。
錆を嫌う所に使用するとの事で、材質はSUS440Cで製作致しました。
弊社はこの程度の精度部品は全て切削・焼き入れ・2工程で仕上げてしまい、研磨加工を行っておりません。
利点はONマシン加工なので同軸度が研磨品よりも精度良く仕上がる事、また1工程少なく仕上がるため納期が早い。
欠点は大量生産向きで無い事です。月産おおよそ数十個〜数千個程度が適合生産数量と考えております。

切削加工サンプル9

特殊なクラウンギアの一種です。
耐蝕・耐摩耗が条件なので、材質はSUS440Cで製作しました。
ギア歯面の面粗度アップ・角(エッジ)部を滑らかなRに仕上げる事と、バリを無くすためにバレル処理を駆使して、お客様に満足頂ける表面状態に仕上げる事が出来ました。

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